第3回 一級建築士 川内 美彦 氏

Last updated 2009-06-04

Universal Design Network Japan

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現場からの便り

一級建築士 川内 美彦 氏

第3回目の現場からの手紙にはアクセスコンサルタント、LADD代表の川内美彦氏にメールインタビューをお願いしました。

【略歴】
一級建築士事務所アクセスプロジェクト主宰
リーガル・アドボカシー育成会議代表理事
リーガル・アドボカシー育成会議(LADD)代表理事
日本初のアクセス・コンサルタントとして活躍されています。
6月のUD国際会議における第1回ロン・メイス賞受賞者の一人です。

[UDNJ] UDの研究をはじめられたきっかけは?
[川内氏] 私は研究者ではないので、研究といわれると自分とは違うかなと思いますが、1990年にロン・メイスに会いにノースカロライナに行ったことがきっかけです。
当時は奥さんのロックハートも生きていて、見た目にはロックハートの方がとてもパワフルで魅力的なリーダーでした。ロンはとても物静かで、まずこちらを受け止めてそれから引き込むといった感じの人でした。ロンの周辺の人たちの彼を取り囲む和がとても好ましいものに見えました。
 そのときビジタビリティを主張しているエレノア・スミスの所にも行きましたが、この両者は当時の日本では全く関心を呼びませんでした。今この二つが脚光を浴びているのを見ると、隔世の感がします。

[UDNJ] 現在の活動について簡単に紹介してください
[川内氏]  「アクセス プロジェクト」という一級建築士事務所をやっていますが、現実の設計はやっていません。もっぱら講演、原稿、草の根活動に忙殺されています。最近はいろいろな研究会や調査会の用事も相当増えています。
草の根活動としては、LADD:リーガル・アドボカシー ―障害を持つ人の権利― の代表として、つい先頃「権利カタログ」というのを作ることができ、これがなかなか好評なので喜んでいます。
LinkIconhttp://www.din.or.jp/~ladd/ladd.htm

[UDNJ] UDに関する活動をしていてもっとも感動したことは?
[川内氏] (これはUDの活動の成果といえるのかどうかよく分かりませんが)この秋、とても感激しています。どこに行っても、外出するたびに(高齢で身体の不自由になった人も含めて)障害のある人に出会うのです。
これは社会が明らかに外出しやすくなり、特に社会的な運動をしていない人も外出を怖れなくなってきたのだと思います。社会が変わっているのを目の当たりにしているようで、とてもうれしく思っています。

[UDNJ] UDの活動でとてもうれしい出会いの経験などがあったら。
[川内氏]  誰とあげればきりがありませんが、98年に3ヶ月、今年は1ヶ月アメリカに滞在し、ユニバーサル・デザインについての調査をしたとき、関係者と深い議論ができたことが大変いい経験になりました。
ユニバーサル・デザインというキーワードで、たとえ初対面でも忌憚なく話せることは素晴らしいことだと思います。 この調査については今まとめの作業中で、出版という形で公表できたらと思っています。

[UDNJ] これからの日本のUDの発展はどう進んでいくのか大胆予測(!?)をお願いします。
[川内氏]  私の予測は当てにはなりませんが、ユニバーサルとバリアフリーの思想的な境界が曖昧なままに、言葉としては定着するのではないかと思います。
ただブームという状態は長続きせず、数年後にはユニバーサル・デザインは手垢の付いた言葉として、新鮮味を失って、商売のキャッチコピーとしてはもう魅力のないものになっているような気がします。
私はこのような状態になることはむしろいいことだと思っていて、こうしてほとんどの人が見向きもしなくなった中で、それでもしつこくユニバーサル・デザインを追究する活動から、本当のユニバーサル・デザインが生まれてくるような気がしています。

[UDNJ] おすすめ文献、ウェブサイトなどをご紹介ください
[川内氏] 私はあまり本を読んだりウェブを覗いたりしないので、いい情報がありません。あえて気取って「Next One」といいましょうか、上で書きました調査についての出版物がおすすめになればと思っています。
これは以前に出した「バリア・フル・ニッポン」(現代書館)が実例を中心とした問題点の指摘に重点を置いていたのに比べると、「論」が中心になりそうです。
LinkIconバリアフル日本 (現代書館)


[UDNJ] 今後の活動予定、またやってみたいことなどがありましたら教えてください
[川内氏]  先日ある人から、その方が関わっているプロジェクトについてユニバーサル・デザインの考え方で改良する事にしたのでと、助言を求められました。
しかし、既に現在稼働しているものにも関わらず、利用状況や問題点に関する調査が行われていないままでやろうとしているということがわかり、非常に落胆しました。 
今そこら中でユニバーサル・デザインと言い始めている中で、本当のユニバーサル・デザインを求める動きをどう作り出していくか、私はユニバーサル・デザインはそれを可能にするしくみ作りだと思っていますので、そのしくみをどう提案できるか、大きなテーマだと思います。

[UDNJ] 身の回りのUDについて私たちにもできる簡単チェックポイントなどがあったら教えてください
[川内氏]  あるモノや環境を人がどのように使っているかを注意深く観察すると、そのモノや環境の問題点やいいところが見えてきます。
でもこれを特に私のような中年のおじさんがやると、あらぬ誤解を受けるので、ご注意を。

[UDNJ] 【番外】UD以外で今一番関心があること、趣味など
[川内氏] 知らない街に行って、そこのアクセスの状況を見ると、どこにも面白い工夫を発見することができます。それが高じて、アクセスという視点でのタウン・ウォッチングを結構ひそかに楽しんでいます。ちょっとマニアックですが・・。

[UDNJ] お忙しいところどうもありがとうございました。